百年企業の経営者は40代で後継者に任せ、任せてから育てましょう、というお話を前回の記事でさせていただきました。
目先の売上なんて忘れてしまえ!
百年企業型経営コンサルタントの青木 忠史(あおき ただし)です。
【お坊さんを目指して日々精進中】
中小企業の場合は、次期後継者候補には、社長のご子息、もしくは自社で育てた幹部社員から選ぶことが多いでしょう。
しかし「後継者」を「育てる」と簡単に言っても、現実的には後継者がいなかったり、適性が明らかに低い等という問題も当然あります。
そのような場合に活用したいのが、今回ご紹介したい諸葛孔明の7つの人物鑑定法です。
私自身も非常に参考になると感じましたので、この紹介記事が何らかのお役に立てれば幸いです。
1. 事の是非を判断させて志を見る
「これから事業をこうしたいんだけど、どう思う?」と相談してみて、どんな判断をするか方向性や志を確かめます。
それ以前に、自社の「方向性」や「コアコンピタンス(他者/他社に真似できない自社の核となる能力・強み)」の確認をしつこいほど繰り返し、お互いに心の底から合意しているということが前提となりますが、それでも忘れることがありますので、繰り返し考えや思いを確認して刷り込み、後継者候補も同じ考え、志になってもらいましょう。
2. 言論で追い詰めて相手の態度の変化を見る
問題を追及していったときに相手がどんな態度をとるか見ます。
聞く耳をもたず邪険な態度をするようでは、まだ後継者としてはふさわしくありません。仕事に対して、人間として、正しい自信を持たせるように日頃から指導をいたしましょう。
3. 相手の計画を聞いて学問や知識を見る
「今月はどうするつもり?」「今年はどんな計画?」「三年先まで考えている?」というような短期から長期にわたって様々な質問をします。
その答えによって後継者の問題意識や将来への展望に対して常に刺激を与え、考えさせることによって育てていきましょう。
4. わざと困難を与えて臨機応変な対応力や勇気を見る
困難な状況を故意に与えて、後継者の失敗に対する打たれ強さを育ててください。
困難を乗り切れないと経営はできません。楽な状況からスタートすると失敗したときに打たれ弱くなります。
たとえば、ある会社では、借入金が1億円ある事業を父である社長が息子に譲りました。社長を退いてからも、ときには息子とけんかしながらも会社を経営し、借入金をなんとか返し終えてすぐに父親が亡くなりました。
没後にわかったのですが、父である前社長は子供に内緒の口座を持っていて、子供たちそれぞれの名義で合計1億円ほど貯金してあったそうです。「その貯金のことを知っていたら借入金返済のための努力や工夫をしなかったかもしれない」と、後継者である二代目社長は父親に感謝をしながら今も経営を続けています。
「困難を科すとかわいそうだから楽をさせてあげたい」という親心はわかりますが、社長に楽をさせてはいけません。
5. 酒に酔わせてその本性を見る
酔って言ったことは本音だといわれますが、酔うと気が緩みその人の本性が出てくるのでしょう。
今では酔わせるために飲ませるような飲酒の強要はハラスメント行為ですからそこまではしませんが、本音を引き出すためには、あえてお酒の力を借りて本性を見る方法もあります。
6. ちょっとした金品を与えてその清廉さを見る
まず、社長職を譲る前に、一部門を任せてみます。そして一定額の予算を与え、どのような振る舞いをするかを観察します。
一般企業では、一部門を任せるというのは成長のプロセスの中でごく当たり前のようでもありますが、中小企業では、多くの会社で事業全体を譲る時まで、後継者に事業を任せないことも多く見受けられます。
後継者として事業を譲る前に、まずは一部門を任せ、予算を与えて、その使い方を見ていきましょう。
その部門の予算活用や成果など、きちんと報告させ、その成果を判断し助言を与えましょう。
7. 仕事をやらせてみて、指示どおりにやるか信頼に値するかを見る
仕事を任せてみて、指示どおりにきちんとこなすのか、それとも言ったことを守らずに自己流でやるのかを見てみます。
ある程度、経験を積み、仕事の本質を理解した上で、自分のやり方で行うのであればいいですが、仕事の本質が見えていないうちに、自分のやり方を通そうとするならまだまだでしょう。
本質が見えているかどうかは、本人では判断がつかないこともあります。サポート役として冷静に判断し、後継者が受け入れられるように伝えるという点にも留意して行いましょう。
以上が諸葛孔明の人物鑑定法で、軍師が次に仕える将軍を選ぶときの視点といわれています。次の経営者を選び、任せる時の参考にしてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。