中小企業の業績改善コラム
『現役経営コンサルタントが活用!業績改善に役立つチェックリスト48』の記事に基づいて、9つのカテゴリーごとに、改善ポイントの詳細をお伝えしていきます。
今回は【#1 経営戦略】
まずは、一番大枠の「経営戦略」から見直しをしましょう。
業績改善のための7つのポイントとともに詳しくご紹介していきたいと思います。
【1】経営戦略
【2】マーケティング戦略
【3】商品戦略
【4】採用戦略
【5】人材育成戦略
【6】会計戦略
【7】経営計画
【8】経営者のブレイクスルー
【9】まとめのマインドセット
業績改善に役立つチェックリスト48
全ての項目を見たい方は
こちらの記事をチェック!
青木忠志(あおき ただし)
■経営コンサル歴20年
■日本建築塗装職人の会 会長
■アサヒリフォーム有限会社2代目代表取締役(現名誉会長)
経営改善実績700社以上・相談実績7,000件以上
『職人の会式 塗装店経営法』開発
『繁盛親方-工事店DXアプリ開発
出版情報
「いちばんやさしい工事店経営の教科書」(ダイヤモンド社)
「のび太くん採用」(サンライズパブリッシング)
「百年企業のつくり方」(フローラル出版)
経営戦略とは、企業が所有する「人」「モノ」「金」「知識」などの経営資源をどのように活用していくのかという大枠の「戦略」を指しています。
「経営戦略」の見直しが必要な理由
- 情報社会になり昔と比べて時代の変化が格段に早くなっていることから、新商品・新サービスを開発しても成果を挙げられる時間が短くなっているため
- 同じく情報社会になり昔のように「良好な人間関係」だけでビジネスが継続するということが難しくなってきているため
これらのことから、全ての企業が「自社の強み」を中心にした経営に強くシフトしていかなければならなくなってきているからであります。具体的には、以下の項目を順番に確認をしてみてください。
広げすぎている事業の撤退はできないか?
経営戦略の見直しによる業績改善の1つ目の視点は、「広げすぎている事業の撤退はできないか?」です。
広げすぎている事業を撤退させることは業績改善の主要な打ち手の1つです。
事業が好調な時には、自社の失敗の要因は見えず、不況などと言われる逆風の時ほど、本当に自社がやるべきことが明確に見える時期であるので、不況になり業績が低迷した時期にこそ、「広げすぎている事業の撤退を潔く行うこと」をおすすめしています。
広げすぎている事業には、以下の兆候が見られることが特徴としてあります。
- 何年たっても収益が上がらず業績低迷状態が続いている
- 上記の結果、人材が定着しない・責任者が育たない状況が長年続いている
- 他人(周りの人)からも(その事業を辞めて)「本業だけで勝負したら…」等と言われることが多い
上記のような兆候が見られる事業からの撤退を行うことにより、経営全体がシャープになり、社員への経営ビジョンの浸透も再び進み、仕事へのモチベーションアップが戻り、組織にも好影響を与えて、経営・事業が伸びていくということが起きます。
「経営者の強み」に基づいた事業に「再構築」してみることはできないか?
経営戦略の見直しによる業績改善の2つ目の視点は、「経営者の強み」に基づいた事業に再構築してみることはできないかという視点です。
経営者の強みに基づいていない事業の特徴とは以下のとおりです。
- 経営者自身がその分野の専門知識を有していない(これまでその専門知識を蓄積する努力を怠ってきた)
- 収益が上がっておらず、何度も撤退をしようかと考えたことがある
- 収益が上がっていたとしても、経営者自身その事業に対する「情熱」が無く、これまでも何度も撤退(譲渡売却)を考えたことがある
また、中小企業における「経営戦略の再構築」とは、具体的には以下を指しています。
- 事業を「手放す」
→撤退・譲渡売却をする - 事業の「運営方法」を見直す
→管理者経験者を採用し事業を任せ、部門別経営を行う - 事業に必要な「専門知識」を得る
→本事業を行っていくことを前提とするなら、事業に必要な専門知識を得る目標を立てる - 事業に対する「動機」を見直す
→その事業から経営者自身と自社にどのようなノウハウを蓄積するのかを改めて考え直し明文化する
そもそも中小企業の場合、経営者の「情熱」が事業の成長に大きく直結する側面が大きいです。そのため収益が上がっていたとしても「経営者の強み」で行っていない事業に対しては、「情熱」が持てず、環境の変化などに対する対応などもおざなりになったり、また先々の不安が生じたりしてしまうこともあります。そして、その姿勢が社員にも悪影響を与えないとも限りません。
ですので、経営者自身の強みで行っていない事業であるならば上記の①②③④を検討してみてください。
また、以前までは「強み」であったものが、今は「弱み」になってしまっている部分もあったりします。ですので、「経営者の強み」に基づく経営戦略の再構築は、一定期間ごとに行うことが大切です。
これにより、経営がシャープになり、業績が向上していく可能性があります。
自社を「専門分野」に特化させ、「圧倒的な強み」を作ることはできないか?
経営戦略による業績改善の3つ目の視点は、「圧倒的な強みを持つ・練ること」ができないかです。
今の時代に敗れていく中小企業の大半は「専門特化」が出来ないこと。
そして、その理由は私が見る限り以下の2つです。
- 創業当時にはそれでもうまくいった経験(過去の成功体験)等があるから
- 「専門特化」をさせなければいけないことは薄々分かっていても「今でさえお客様が少ないのに、『専門特化』させるとさらにお客様が少なくなってしまうのではないか…」と逆に不安になってしまうから
①についての対策は、「過去の自社を今の自社が超えることを目標にすること」以外ありません。
②についての対策は、まず「専門特化」させることで、その分野(商品・サービス)に特化した経験・ノウハウを蓄積することを目標とします。そしてその次には、「(特化して圧倒的に強くなった)商品・サービス」を求めてくれるお客様をマーケティング目線で見直し、新しいマーケットを見つけることをします。
上記の2つを行うことで、新しいマーケットが見え、業績向上の道が見えるというわけです。
「屋号や商品名」を変えてみることはできないか?
経営戦略からの業績改善の4つ目の視点は「屋号や商品名」を変えてみることはできないかです。
その理由は単純明白。競争社会の中でお客様に印象を与えて、覚えてもらうことが優位性を発揮できるというのはマーケティング上の原理原則だから。
さらに今はネット検索の時代となり、屋号(会社名)・商品名・サービス名もSEO的な影響を受けるので、分かりやすい・検索されやすい名前のほうが競争優位に立つことができるからです。
現に、私のクライアント様では、会社名を変えただけで、売上が2倍になったというケースもあります。また、以下は一般企業の商品名や屋号などを変えることによって売上UPを実現した有名な一例です。
名前を変えて業績UPの事例
- レナウン
「フレッシュライフ」→「通勤快足」に変えて、売上10倍にUP - 伊藤園
「缶煎茶」→「おーいお茶」に変えて、緑茶飲料市場シェア率20年間No.1へ! - 王子ネピア
「モイスチャーティッシュ」→「鼻セレブ」にネーミング変更して、商品の売上は10倍に! - 日本ハインツ
「ゴールデンパティ」→「おはようポテト」に変えて、市場シェア率が3.5%から14%へ大躍進! - 龍角散
旧名「クララ」→「龍角散ダイレクトスティック」にネーミング変更して、商品の売上は2倍に! - 三和豆友食品
「男前豆腐」シリーズをヒットさせ、社名を「男前豆腐店」に変更
京都の倒産した大手豆腐メーカーの工場を買い取るまでに! - 株式会社センチュリー(PC周辺機器)
「裸族」シリーズからHDD周辺機器をヒットシリーズに!
もちろんネーミングだけではなく様々な戦略の上に、業績改善は成り立っているかとは思いますが、ネーミングを変えて業績が向上した有名な事例です。
地域密着の中小企業の中にも「よい商品」や「良いサービス」を持った会社様はたくさんあります。しかし、分かりにくい商品名や分かりにくい屋号のため、売れ行きがよくないケースもたくさんあると感じていますので、ぜひ「商品名」「屋号」を変えてみるという「経営戦略」も検討してみてください。
広告効果が格段に向上し、業績向上に大きな影響を与える可能性があります。
元請企業様に対してサービス提供できないか?
経営戦略からの業績改善の5つ目の視点は「自社サービスを元請企業様に提供できないか?」です。
元請(もとうけ)企業とは、クライアントから直接依頼を受けた企業のこと。
私がよく接している建築業界では、消費者直販事業をしながら元請建設業者様からのお仕事を貰うということはごく当たり前に行われていることです。しかし、他の業界では全くそのようなことは行われていない状況も多々、お見受けします。
そこで、建築業界が直販事業と元請企業様の仕事を行う「経営スタイル」を行っているように、他の業界でも取り入れていくことができれば、今の自社サービスだけでも、もっと売上を上げることは容易に想像ができます。
※ただし、その時に「元請企業様のお客様と直接取引を行う中抜き行為」はご法度となりますので、商道徳を守って行う姿勢も大切です。
コンサルティング展開ができないか?
経営戦略からの業績向上の6つ目の視点は「コンサルティング展開ができないか?」です。
自社で有している経営上のノウハウを同業他社に教えるコンサルティング展開は、健全経営を行っている企業であればもっとも早い業績向上の道の1つです。
具体的には以下のポイントでコンサルティング展開が可能です。
コンサルティング展開が可能な分野
- 売上UPに関わる集客コンサルティング・営業コンサルティング
- 商品サービス開発コンサルティング
- 人材採用や人事マネジメントコンサルティング
自社の「強み」がどの分野にあるかをよく見極めた上で事業展開を試みることが大切ですね。
ただ、自社のノウハウを競合他社に教えることに対して、「真似されて、うちの業績が上がらなくなってしまったらどうしよう・・・」などと、不安を感じることもあるかもしれません。
しかし、結論を言うと、大丈夫です。
確かに、コンサルティングを提供することを通して、自社のメソッドは伝わりますが、会社経営の根底を支えている「企業哲学的な部分」を真似することは不可能です。そして、コンサルを受けた会社は、そのコンサルティングを通して自社の強みを開花させていくので、あなたの会社とは、全く違う会社に成長をされていくことがほとんどだからです。
反面、競合他社の経営者様は、実際に同じ業界でうまく経営を行っている「ノウハウ」を知りたいという欲求が強くあることからも、自社のノウハウをコンサルティング展開をするという事業は、ヒットする確率がとても高いのも特長です。
またこのようなコンサルティング展開は、IT系の企業のみならず、今のような情報社会では、工務店や飲食店などの地域密着型企業も考えていくことで事業拡大のチャンスを見出すことができるはずです。
バックエンド商品をトコトン作れないか?
経営戦略から7つ目の業績改善の視点は「バックエンド商品をトコトン作れないか?」です。
バックエンド商品とは、自社で生み出す利益率の高い商品・サービスのこと。利幅が大きく利益率も高いので、薄利多売や、価格競争に巻き込まれることなく、自社の収益の最大化を助けてくれます。
バックエンド商品をトコトン作ることが大切な理由は以下の4点です。
- ビジネスでは、新規客を探す費用が高いため
- 一度信頼を得たお客様のさらなるニーズに応えていくことが売上UPの近道であるため
- バックエンド商品の中から次の「メイン商品(メインサービス)」も誕生してくる可能性があるため
- バックエンド商品を作り続けることで「自社の強み」がより明確になり新規客開拓にも好影響を与えるため
常に新規のお客様を集め続けるのは容易ではありません。一人のお客様との長期的なお付き合い(信頼関係)を実現するためにも、自社の「本命商品」となる、バックエンド商品の存在はとても重要なのです。
お疲れ様でした。以上が、「経営戦略」からの代表的な見直しでした。
次は、【業績改善シリーズ #2 マーケティング戦略】についてです。
累計700社以上の中小企業の
“経営危機”と“業績改善”の
一部始終を間近でみてきた、
現役経営コンサルタントが活用する
【チェックリスト48】の全項目を公開!
まとめ記事はこちらをチェック!