中小企業の業績改善コラム
『現役経営コンサルタントが活用!業績改善に役立つチェックリスト48』の記事に基づいて、9つのカテゴリーごとに、改善ポイントの詳細をお伝えしていきます。
今回は【#7 経営計画】。
「経営計画」とは、「経営ビジョン」に基づく「経営目標」を実現するための「計画」です。主に「長期」「中期」「短期」で考えることが多く、長期経営計画は5~10年前後を想定、中期経営計画は3~5年前後を想定、短期経営計画は1年を想定しています。
【1】経営戦略
【2】マーケティング戦略
【3】商品戦略
【4】採用戦略
【5】人材育成戦略
【6】会計戦略
【7】経営計画
【8】経営者のブレイクスルー
【9】まとめのマインドセット
特に中小企業の場合は、「短期経営計画」を立てることから始め、慣れてくるに従って「中期経営計画」を立てていけるようになるのが1つのセオリーです。
ですが、ここでは、まずは “短期経営計画を一度も立てたことが無い中小企業様” を想定した6つのチェック項目をご提案いたしますね。
業績改善に役立つチェックリスト48
全ての項目を見たい方は
こちらの記事をチェック!
青木忠志(あおき ただし)
■経営コンサル歴20年
■日本建築塗装職人の会 会長
■アサヒリフォーム有限会社2代目代表取締役(現名誉会長)
経営改善実績700社以上・相談実績7,000件以上
『職人の会式 塗装店経営法』開発
『繁盛親方-工事店DXアプリ開発
出版情報
「いちばんやさしい工事店経営の教科書」(ダイヤモンド社)
「のび太くん採用」(サンライズパブリッシング)
「百年企業のつくり方」(フローラル出版)
過去3年分の『売上実績表』を作成してみる
「経営計画」からの業績改善の1つ目の視点は、「過去3年分の『売上実績表(月次推移)』を作成してみる」ことです。
なぜかというと、過去3年間の『売上実績表(月次推移)』を作成することで、現状をある程度、把握することができるからです。現状、言い換えると『現在位置』が分かることで、次に正しい目標を立てることができるようになるからです。
作成する売上実績表(月次推移)は、商品や部門ごと、そしてKPI(key performance indicator)を含めたものが理想です。
つまり、商品ごとの過去3年間の月次売上や、部門ごとの過去3年間の月次売上、過去3年間の販売数、過去3年間の見込客数(月次推移)など、自社の経営を形作っている売上・KPIを明確にしていくことで、必ずやるべきことが見えてくるからです。
損益計算書と貸借対照表の過去5年間比較をしてみる
「経営計画」からの業績改善の2つ目の視点は「損益計算書と貸借対照表の過去5年間を比較してみること」です。
「損益計算書」からは、「売上」「原価」「人件費」その他の経費などを見ることで、自社の適正な「損益モデル」を分析でき、それぞれの勘定科目の売上に対する比率目標を立ていくことができるようになるからです。
「貸借対照表」からは、「流動資産」や「利益剰余金」の目標や、「借入金」の返済目標、「売掛金」の回収期間目標など、会社の財務面を強くするための目標を立てることができるようになるからです。
これらを行っていくことで、「健全堅実経営」に近づいていくことでしょう。
退社社員の退社原因を振り返ってみる(過去5年間)
「経営計画」からの業績改善の3つ目の視点は、「過去5年間の退社社員の退社原因を振り返ってみる」ことです。
退職当時は見えなかったことでも、何年か経過した後なら、その当時の退職理由等を客観的に考えることができることもあります。その多くの理由はざっと以下のとおりです。
社員の退社理由
- 経営ビジョン面
経営ビジョンへの共感が取れていなかったため - マーケティング面
お客様が少なくなり、十分な仕事を与えられなかったため - 採用戦略面
業務特性(能力面)でマッチしていなかったため - 人材育成面
業務マニュアルも整備されていなかったため業務指導が十分に出来なかったため
処遇面などに不備があったため - 組織面
合わない上司と合わせてしまったため
これらを冷静に振り返ることで、今後の「経営計画」に落とし込む「経営課題」がより明確になります。
「経営ビジョン」を振り返ってみる(過去5年間)
「経営計画」からの業績改善の4つ目の視点は「過去5年前の経営ビジョンを振り返ってみること」です。
それにより、何が実現でき、何が実現できなかったのか、また、それぞれの理由は何だったのかを振り返ってみます。すると、短期的な視野では見えなかった「経営課題」が見えることもあります。
毎年努力しても全く実現できなかったことについても、そもそも、やり方を根底から変えたほうが良いのか、そもそも、その当時からの「経営目標」の設定自体が間違っていたのではないか、など、なんらかの「ボトルネック要因」を発見してみることに力を入れてみてください。
現在の経営課題を書き、理想の未来の会社の状況も書いてみる
「経営計画」からの業績改善の視点の5つ目は、「現在の経営課題を書き、理想の未来の会社の状況も書いてみる」です。
このコラムをここまで読んできていただいたあなたは様々な経営課題が見つかったことと思います。そこで次は、以下を実習してみてください。
ここで実習!アクションプラン
- ここまで出てきた自社の経営課題を一覧表に書き出してみる
- 上記の課題を1つ1つをクリアしていく目標を立ててみる
- それと同時に、これからどのような会社にしたいのかを書き出してみる
最初はたくさんの経営課題があるように感じたとしても、まず実行していくことから始めましょう。
経営課題がたくさんあることは悪いことではありません。会社が未来に向かってがんばっている証拠です。
むしろ、経営課題を社長1人で抱えるのではなく、社員の方々と共有して課題に取り組んでいき、よい会社を作っていくことを心掛けていきましょう。
簡易版・単年度経営計画書(A1・1枚)を書いてみる
「経営計画」からの6つ目の業績改善の視点は「簡易単年度経営計画書」(A4・1枚)を書いてみることです。
この役目は、まず「経営の方向性」を明確にすることです。これにより「自社の強み」が段々と見えるようになっていきますし、間違っていた場合にもスピーディに「方向転換」を考えるきっかけが与えられるからです。
経営計画書に記載する内容
中小企業が、はじめて書く「経営計画書」に記載する内容は以下のとおりです。
- 経営ビジョン
- 経営理念
- 今期のスローガン
- 全体経営数値目標
(売上・主要KPI・原価率・営業利益・利益剰余金) - 現在の経営課題の解決とGOAL
はじめての経営計画書の書き方
中小企業の場合は、精密な「経営計画書」を書こうと思うのではなく、まずは、現状からどのような方向性を目指すのか?を明確に書き始めていくことをおすすめしています。
一般的な「経営計画書の書き方」などのセミナーに行くと、事業規模が大きな会社を対象にしている内容が多く見かけられます。そのため、
「中小零細企業にとっては経営計画書は難しいものだ」
「もう少し大きくなってからでないと経営計画書を書くことはできないのだ」
などと、大半の方が誤解をされています。そうではなく、まず、自社に合ったシンプルな経営計画を書くことから始めてみてください。そのうち、徐々に、書いておきたい内容が増えてくるはずだからです。
このように、中小企業の経営計画書は、世間一般的な形に囚われることなく、今の自社に必要な課題と目指すべき未来を明文化することに重点を置いていきましょう。
適宜ズレを修正することを心掛ける
そして、書いたら、PCやデスクの中に閉まっておくのではなく、見える場所に掲示する・毎日見つめることを通して、ズレていたと感じたらすぐに修正するを繰り返しましょう。
私が経営コンサルタントとして、中小企業の経営者さんに今どきの経営計画書の位置づけとしてお伝えしていることは・・・
何があっても、最初に決めた目標どおりに行くことが大事なのではなく、自動運転自動車と同じで障害物を察知すると同時に微調整をするように、日々に微調整をしながら前進していくこと
ということです。
それがたとえ、最初決めた道と全く変わってきてしまっても、経営者自身が心からコミットメントをして行うことが一番経営成功の確率を高めますので、時には、社長自身の経験から導き出される「直感」に従うことも大切です。
ただし、その時には独断で即判断するのではなく、決断する前には身の回りの社員に話してみて、社員からのフィードバックもよく聞いてみてください。ここで社員の意見を聞く意味としては、社員の意見で判断をするのではなく、社員の意見を元に、社長自身自分の考え方を客観的に見つめるというニュアンスが強いと思います。
お疲れ様でした。以上が、「経営計画」からの業績改善の視点となります。
次は、【業績改善シリーズ #8 経営者のブレイクスルー】についてです。
累計700社以上の中小企業の
“経営危機”と“業績改善”の
一部始終を間近でみてきた、
現役経営コンサルタントが活用する
【チェックリスト48】の全項目を公開!
まとめ記事はこちらをチェック!