中小企業の業績改善コラム
『現役経営コンサルタントが活用!業績改善に役立つチェックリスト48』の記事に基づいて、9つのカテゴリーごとに、改善ポイントの詳細をお伝えしていきます。
今回は【#6 会計戦略】。
「会計面」から「経営戦略」を見直していきます。前半は「PL:損益計算書」に関わる部分、後半は「BS:貸借対照表」に関わる部分の見直しのポイントを提案していきます。
【1】経営戦略
【2】マーケティング戦略
【3】商品戦略
【4】採用戦略
【5】人材育成戦略
【6】会計戦略
【7】経営計画
【8】経営者のブレイクスルー
【9】まとめのマインドセット
業績改善に役立つチェックリスト48
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青木忠志(あおき ただし)
■経営コンサル歴20年
■日本建築塗装職人の会 会長
■アサヒリフォーム有限会社2代目代表取締役(現名誉会長)
経営改善実績700社以上・相談実績7,000件以上
『職人の会式 塗装店経営法』開発
『繁盛親方-工事店DXアプリ開発
出版情報
「いちばんやさしい工事店経営の教科書」(ダイヤモンド社)
「のび太くん採用」(サンライズパブリッシング)
「百年企業のつくり方」(フローラル出版)
経費の見直しができないか?
「会計戦略」からの業績改善の視点の1つ目は「経費の見直しができないか」です。
これは多くの経営者や会計事務所がまず最初に着目する点でしょう。
その中で優先しがちな項目は「会議費」「接待交際費」「福利厚生費」です。ただし、これらだけでは、見直せたとしてもたかだか数パーセント。業績低迷の根本的な解決方法にはなりにくいものです。本当の原因はここにはありませんので、以下を順番に見ていきましょうね。
「地代家賃」の見直し(事務所・店舗の移転はできないか?)
次の経費科目の見直しは「地代家賃」です。業績が低迷する時に事業にマッチしていない大きな店舗、広いスペースを借りているケースも多々あります。
また、一方で店舗が必要なビジネスモデルにも関わらず店舗の場所が悪いというケースもあります。
これらの場合には、事務所・店舗を見直すことが重要です。
ただし、広すぎる場所から小さな場所に移転することは容易であったとしても、「店舗の場所が悪いので良い場所に移転をする」という点は、経営戦略的な視点が必要になるため、経営コンサルタントの専門家等に相談をした上で、意思決定をしていただくことをおすすめします。
店舗の移転は?事務所・店舗の見直しは地代家賃を下げるだけではなく、戦略的に検討することで、売上にも好影響を与えることができます。
「先行投資」の見直し(社長が受けている研修・コンサルティング等)
次の経費科目の見直しは、社長が使う「研修」「セミナー」等の「先行投資」です。
中小企業にとって他社情報などの経営情報を得ることは重要な情報収集であり、経営者にとっても大切な学びの1つでもあるので、全てが無駄とは言い切れませんが、本業との関わりが薄いと思われるものは見直しをする必要性はありそうです。
私は、どんな業種でも業績を向上させる最短距離は「経営者が自らの事業と真正面に向かい合うこと」という原理原則を、信じて疑いません。
「広告宣伝費」の見直し
次の経費科目の見直しは「広告宣伝費」です。
事業全体の経費の中でも大きく影響を与えやすいのが新規客を集めるための「広告宣伝費」です。「広告宣伝費」を見直すためには、全ての広告媒体に対する「反響・契約データ(CPO・CPR)」を記録している必要性があります。それにより、有効的な広告を選定していきます。また、「反響・契約データ」を記録する前のテストマーケの段階であることもあります。
その場合には、予算観を持ってテストマーケをしていくことを再度検討していきます。
「人件費」の見直し
次の経費科目の見直しは「人件費」です。
「人件費」の見直しは、比較的反論を頂きやすい科目でもありますが、経営コンサルタントとして数多くの中小企業様を見てきた中で、見直す点は以下の2点です。
- 過剰人員となる営業担当者がいないか?
- 過剰人員となる事務担当者がいないか?
「組織図」を構想した上で、過剰人員となっている人材に対する見直しを行う必要があります。しかし、ここでよくある反論は次のとおりです。
「その人をクビにしたらかわいそうだ」
「コンサルタントのあなたは人情味も無いのか」
です。しかし、それに対する私からの反論は以下のとおりです。
「業績が悪い会社で雇い続けるほうが、その人の人生に対して申し訳ない」
「その人が活躍でき、今の会社より多くのお給料をもらえる企業を探せば必ずある」
このような概念に基づき、過剰な人材を雇用してしまっていたら、『天下の適材適所へ異動してもらう(転職してもらう)』ことを考えてみてください。転職後のほうが幸せな環境が与えられたりすることもありますので。
保険料の見直し
次の経費科目の見直しは「保険料」の見直しです。保険の見直しは以下の2点です。
- 不要な掛け捨て保険の見直し(低プランへの見直し・もしくは解約)
- 掛けすぎている資産形成保険(退職金用の保険など)の見直し
です。現実的には、頼りにしている税理士先生・会計士先生に経営の相談をしていくことで勧められて入ってしまうことが多く、その結果、業績が不健全になるという本末転倒の悪循環が起きていることが多くあります。
私が接する限り、かなり多くの割合の方々が、内部留保も無いのに、退職金用の保険を多額に掛けていたりします。その上でひどいケースは、その保険の資産計上されている金額以上の借入金が同時にあることです。経営として本末転倒と言わざるを得ません。
中小企業の原理原則としては、まず「現金(流動資産)を手前に置いておくこと」であるため、現金が無いのであれば、退職金用の保険などは一時解約し、まずは手元現金を貯蓄していくこと(利益剰余金を貯めていくこと)を目標にしていきましょう。
役員報酬の見直し
次の経費科目の見直しは「役員報酬」です。
役員報酬の見直しのポイントは以下の1点です。
- 法人の利益以上の役員報酬を何年も継続して取っている
これにおいては、役員報酬より法人の利益額のほうを多めに設定したほうが良いというのが私の考えです。なぜなら原則的に法人税よりも所得税のほうが高いため、役員報酬が多すぎることにより納税額の面で不利になってしまっているからです。(応用はいろいろあるとしても、まずは原則的な点として)
ただし、最低限生活を保障できる役員報酬は必要ですので、それ以下に設定するということではありません。あくまで、役員報酬を高くしすぎている場合の点についてのみ、ここでは訴求しています。また、この「役員報酬の見直し」は事業を長く健全に発展繁栄させていくことを前提にした改善提案です。
以上ですが、その他の細かい点(通信費の見直しなど・・・)はそれぞれの会社様でもお気づきのはずです。経営戦略的に経費においては上記をベースによく考え、見直していきましょう。
仕入れ先・外注業者(原価)の見直しができないか?
「会計戦略」からの業績改善の視点2つ目は「仕入れ先・外注業者(原価)の見直しができないか」です。
- 仕入れ先に対する仕入れ金額の交渉
- 仕入れ先の変更
- 仕入れ商品の変更
- 外注業者への発注金額の変更
- 外注業者の変更
など、です。往々にして1社のみに発注している状況が続くと甘えが出てきて、原価が高くなる傾向にあります。
ですが、すぐに値下げ交渉をしたり切り替えると波風が立ちますので、中期的戦略に基づき水面下では別の業者発掘・商品発掘を計画的に実行いたしましょう。できれば、発注先と協力業者は毎年見直しをしていく目標を立てましょう。
中小企業の場合は、この「仕入れ・外注業者の見直し」業務も社長の重要な仕事となります。
新品ばかり購入していないか?
「会計戦略」からの業績改善の3つ目の視点は「新品ばかり購入していないか?」です。
特に、自動車・作業車を活用する業界の場合、新品ばかりを購入している会社と、中古でうまく回している会社では10年間程度の時間が経過すると、内部留保が数千万円単位の差になっていることが多々あります。
新品(新車)を購入する経営者は「長く乗って元を取る」と考えていることが多いかと思いますが、会計面を見た時に元は取れておらず、中古で回ししている会社のほうが内部留保(利益剰余金)が残っているのが私が見てきた現実です。
新品には「バリュー(付加価値)」が乗っている分高い金額を支払わなければなりませんので、できる限り中古を買い、大切に長く使用するように心がけていくことが、会社にお金を残していく適切な方法であると考えます。
社屋・店舗を購入しないよう気を付けているか?
「会計戦略」からの業績改善の4つ目の視点は「社屋・店舗を購入しないよう気を付けているか?」です。こちらも、健全な貸借対照表(BS)を作るための改善提案です。
原理原則として「自社社屋・店舗は自社で持たないこと」が理想的です。
その理由として、事業を発展させている経営者は以下のように答えられます。
- 事業は時と共に形が変わるが、社屋を持ってしまったら事業の柔軟性が無くなるため
- 社屋は売りづらい不動産であるため
- 経営規模相応の内部留保を蓄えておかなければならないが、事業が成長した頃に流動資産を固定資産に変えてしまうことで成長した組織を守るキャッシュが無くなるリスクとなるため
ある時まで業績が好調であり、少しずつ内部留保が貯まってきた時に、自社ビル・土地を購入し、その後業績が低迷していくというのは、現在でも起きている「中小企業の失敗の典型的パターン」でもあるかもしれません。
業績が好調で内部留保が貯まってくると自社ビルを購入してしまう理由は以下のとおりです。
- 銀行等から声がかかるから
- 店舗が増えたりすると、地代家賃も大きな額になってくるので、1まとめにしたほうが良いのではないかと考えるため
しかし、現在2020年~2021年のように、いついかなる時に突然先が見えない環境になることもあるので、その時を想定し、なるべく「現金」を持ち続けておくように心がけておきましょう。
それでも、どうしても利益で不動産を購入したい場合には社長の自宅などの住居などをおすすめしています。自宅であれば、万が一の時には売却することも可能だからです。
内部留保目標を持っているか?
「会計戦略」からの業績改善5つ目の視点は「内部留保目標を持っているか」です。
「内部留保」とは、企業が企業活動で上げた利益を蓄積した分(資金)を指します。いわゆる、法人の「貯金」「プール金」です。この内部留保目標を持つとは、「会社の中にいくらのお金を貯めていくのか?」という目標を持つことを指しています。
私が経営コンサルタントとして提示している目標は「年商の50%の内部留保を蓄えましょう」です。
具体的な内部目標は以下のとおりです。
- 年商3000万円であれば1500万円の内部留保をまずは目標に
- 年商1億円であれば5000万円の内部留保をまずは目標に
- 年商2億円であれば1億円の内部留保をまずは目標に
そして年商の50%が貯まってきたら年商1年分を目標にしていきましょう。
このような目標を持ち実現していくと、どの会社の社長でも次第に経営に自信を持つようになり、その自信が社長の雰囲気に現れ、その結果、良い社風になり、良い人材が集まるようになり、事業も成長していくでしょう。
なぜこのようなことが起きるのかと思われるのなら「逆」を考えてみるとお分かりただけるはずです。資金繰りが厳しい時には、社長も切羽詰まっており、良いアイデアもなかなか出ず、社員に対してもいつも以上に厳しく接してしまったりしてしまいます。その結果、窮屈な雰囲気の会社になり、成長が実現できないということになるからです。
このようなことからも、企業がしっかりと内部留保を蓄えていることは働く社員に安心を与え、その結果、成長に繋がっていきますので、明確な内部留保目標を持つことが大切だということです。
お疲れ様でした。以上が、「会計戦略」からの5つの見直し・改善ポイントでした。
次は、【業績改善シリーズ #7 経営計画】についてです。
累計700社以上の中小企業の
“経営危機”と“業績改善”の
一部始終を間近でみてきた、
現役経営コンサルタントが活用する
【チェックリスト48】の全項目を公開!
まとめ記事はこちらをチェック!