【#4.中小企業の採用戦略】中長期視点で取り組む4つの業績改善ポイント

中小企業の業績改善コラム

現役経営コンサルタントが活用!業績改善に役立つチェックリスト48』の記事に基づいて、9つのカテゴリーごとに、改善ポイントの詳細をお伝えしていきます。

今回は【#4 採用戦略】。
採用戦略は、主に中長期的な業績改善の戦略になりますが、多くの中小企業には採用の戦略・重要性・ポイントなど、深い内容はあまり知られていないのではないかと感じます。

【1】経営戦略
【2】マーケティング戦略
【3】商品戦略
【4】採用戦略
【5】人材育成戦略
【6】会計戦略
【7】経営計画
【8】経営者のブレイクスルー
【9】まとめのマインドセット

中小企業では創業社長の晩年に「後継者が居ない…」等という悩みが経営課題ととして取り上げられることが多々ありますが、実は、今回提案する「採用戦略」を、経営者が若い頃から理解して取り組んでいたら、そのような問題はかなり減るのではないかと思います。

また、中小企業の事業の安定や事業の成長にもかなりのウエイトを占めるのがこの「採用戦略」でもあります。ただし、その効果が明確に表れるまでには、5年前後から10年以上かかる場合もありますので、即効性を求めるのではなく、中長期的な視点で取り組んでいきましょう。

業績改善に役立つチェックリスト48
全ての項目を見たい方は
こちらの記事をチェック!

この記事の著者です!

青木忠志(あおき ただし)

■経営コンサル歴20年
■日本建築塗装職人の会 会長
■アサヒリフォーム有限会社2代目代表取締役(現名誉会長)
経営改善実績700社以上・相談実績7,000件以上
『職人の会式 塗装店経営法』開発
『繁盛親方-工事店DXアプリ開発

出版情報

「いちばんやさしい工事店経営の教科書」(ダイヤモンド社)
「のび太くん採用」(サンライズパブリッシング)
「百年企業のつくり方」(フローラル出版)

目次

会社の経営理念・経営ビジョン・価値観を設計できないか?

採用戦略からの業績改善の1つ目の視点は、「会社の経営理念・経営ビジョン・価値観を設計できないか」です。

経営理念とは

経営理念とは、その会社を経営する上での理想・外せない考え方・行動指針・基本的姿勢などを指しています。特に、決まった形のルールがあるわけではなく、その事業を通して、経営者が「こうしたい。こうありたい。」と心の底から願っている抽象的概念を指しています。

例えば、リフォーム事業者の場合は「いつもの暮らしの中で、たくさんの幸せを届けたい」など、というような表現方法にもなるでしょう。

どちらかというと、天国的な発想になりそうですね。そして、抽象的であり天国的な経営理念は、社員が掲げる理想となり、社員を精神的にモチベートします。

経営ビジョンとは

経営ビジョンとは、実際に、経営理念を実現するための、より具体的な方針を示すものとなります。

ここでもリフォーム業者の例を出すと「◯◯◯の特長のある◯◯◯リフォーム工事で、◯◯◯市での市場シェア率No.1 年間◯◯◯件施工を目指す」もしくは、もっとゆるーくすると「◯◯◯リフォームで◯◯地区ナンバーワンを目指す」などとなりそうですね。

経営理念が「天国的な発想」であったことに対し、「経営ビジョン」は、「この世的な視点」からの具体性を伴ったビジョンという認識が強いものです。そして、具体的な経営ビジョンは、経営目標に落とし込まれ、社員を現実的にモチベートします。

価値観とは

企業における価値観とは、事業活動をする上で、外してはいけない考え方・行動様式から始まり、さらにその会社独自で大切にしてきた「考え方」や「行動様式」を指しています。俗に言うと「うちのやり方」や「うちの社風」と、表現されているものに該当すると思います。

会社で大切にしている「価値観」を抽出して明文化していくことで、同じ業種であっても「他社ではなく、この会社で働きたい」というように、求職者に思ってもらうことができるようになります。

また、その会社で働く意義を「経済的報酬」以外の部分でも考えられるようになり、職場内における不調和や、仕事の仕方に対するミスマッチを大きく減少させられるでしょう。


以上が、「経営理念」「経営ビジョン」「価値観」についてですが、1人目の社員が会社に入社する前段階から考えていくことが大切であると今は言われるようになりました。

念のため「経営理念」「経営ビジョン」「価値観」を設計していくことで期待できる効果も確認してみましょう。

  • 自社の「理念・ビジョン・価値観」に合わないミスマッチ採用を防げるようになり、会社の成長を促進できるようになる
  • 自社の「理念・ビジョン・価値観」をまとめることによって、代表の考えをまとめる効果もある
  • 上記の結果、採用競争力を高めることができる
  • 集客面においても、他社との差別化を感じてもらうきっかけにもなる
  • 働く社員にも、良い会社で働いていると感じてもらいやすくなる
  • サービス提供の品質も向上し、お客様満足度も高まる
  • 結果的に利益が残るようになり、会社が未来へ投資できるようになり発展する

このようなことからも、私は、中小企業や個人事業主さんこそ「経営理念」「経営ビジョン」「価値観」を早期に策定して、恥ずかしがらずに、求人広告やWEBサイトで表現していくことを伝えています。それが、採用戦略においても大切だからです。

理念&ビジョン&価値観マッチング採用だけに絞った採用を行っているか?

採用戦略からの業績改善の2つ目は、「理念&ビジョン&価値観マッチング採用だけに絞った採用を行っているか?」です。

その理由は、上の項でも少し申し上げましたが、ミスマッチ採用を防ぎ、かつ会社の成長を実現するためです。情報社会になり、私は、中小企業の採用状況は、3極化していると感じます。

  • 1つ目の極:情報社会に自社の「理念&ビジョン&価値観」を表現していくことで、「理念&ビジョン&価値観マッチング採用」の実践を加速させている中小企業
  • 2つ目の極:情報社会で、「スキル」を中心に「より良い条件」を検索する求職者に振りまわれるごとくに、「スキル&条件採用」を加速させている中小企業です。
  • 3つ目の極:旧来の求人観を崩せず、採用難であえいでいる中小企業です。

上記の3つでは、言わずとも、「理念&ビジョン&価値観マッチング採用」を行っている中小企業がより良い会社を作り、成長を実現しているという状況を毎日のように目にしています。

そして、「価値観」というのは、マッチしているか・していないかの二者択一であり、全員が自社の価値観にマッチしている状態を目指すことが、この「理念&ビジョン&価値観マッチング採用」の継続的な目標となります。

求人における比較基準を見てみる

そもそも、求職者が求人広告を見て判断する比較基準は以下のとおりです。そして、採用力を最大化するためには、以下の①×②×③×④を最大化させていくイメージを持つことが大切です。

①採用マーケティング力
求人広告媒体
自社WEBサイト求人ページ
スカウト媒体
社員クチコミ紹介
求人用会社案内等の紙媒体

②待遇面
給与
休日
勤務時間
福利厚生
退職金

③企業力
企業規模
企業イメージ
認知度
財務状況

×


経営理念・経営ビジョン・価値観

上記の表を見てもお分かりのとおり、④経営理念・経営ビジョン・価値観は、全てに対しての掛け算であるため、④がズレてしまうことで、全てがズレてしまうとも言いかえることもできます。

ただし、現状、多くの中小企業では、忙しい今を解決するための「猫の手も借りたい採用」=「②待遇面だけの採用」を繰り返し行い、数年経ったら採用した社員は辞めているということを繰り返してしまっているのです。退社の理由は、上記の表から見ると、入社後に③と④を改めて理解し、ミスマッチだったことに気がつくからではないでしょうか。

そのような採用を繰り返している間に社長は着々と年を重ねていき、社長の高齢化と共にサービスも陳腐化していき、社員の定着も悪くなり、社員も徐々に高齢化していき、倒産・廃業というのがよくある中小企業の流れです。

このような中小企業の倒産・廃業への流れを打ち破る方法のひとつが、社長が若い時期から「理念&ビジョン&価値観マッチング採用」だけを行うという決断になります。

10年後、20年後を見た上で、今、「理念&ビジョン&価値観マッチング型採用」を実行することが極めて大切です。

自分(経営者)にとっての補完関係になる人材を採用できているか?

採用戦略からの業績改善の3つ目の視点は「経営者にとっての補完関係になる人材を採用できているか?」です。

中小企業経営者にとっての補完関係になる人材とは、経営者とは違う専門領域を持った人材であり、かつ、経営者の理念ビジョンに共感してくれる人材を指しています。

採用の方法・ポイント

  • 明確な事業ビジョンを描き、卓越した事業戦略を描くこと・・・これがその事業に取り組んでみたいという人を集める力になります。
  • 社長が他の専門領域に対して謙虚になること・・・中小企業社長はワンマン社長が多いものですが、他の専門領域に対して謙虚になることで、他の専門領域を持った人材を集める力となります。
  • 社長自身がその専門領域に対する学習も行うこと・・・自分と違う専門領域の人材のキャリアプラン等も考えていく土台として、ある程度、社長自身も学習をすることが求められます。
  • 自社の担当となってくれる人材採用会社・担当者さんを見つけ、現状の自社に入社できる人材イメージを明確にすること・・・「採用市場」の中で自社を見つめ、採用戦略を構想するためにも、人材採用会社の良い担当者さんを探すことも大切な要素となります。

これらを通して、自分(経営者)にとっての補完関係になる人材を採用できれば、ボトルネックを突破して、もう一段の成長を実現できるでしょう。

経験豊富な年長者を採用することはできないか?

採用戦略からの業績改善の4つ目の視点は、「経験豊富な年長者を採用することはできないか?」です。

経験が豊富な定年退職後の年長者は、即戦力になっていただきやすく、また若い方には無い知見を持っておられ、会社を発展させる力となってくれるケースが多々あります。

また、実際に労働してもらう社員として雇用するだけではなく、パート社員として週に2日程度の勤務としても、「顧問のように経営の相談をするスタイル」で採用すること等も検討の余地があります。このような「高齢者採用」は、やり方次第では重要な人材採用戦略ともなりうるものです。

あなたの会社でも、経験豊富な年長者を採用することはできませんか?


お疲れ様でした。以上が、「採用戦略」からの4つの見直し・改善ポイントでした。

次は、【業績改善シリーズ #5 人材育成戦略】についてです。

累計700社以上の中小企業の
“経営危機”“業績改善”
一部始終を間近でみてきた、
現役経営コンサルタントが活用する
【チェックリスト48】の全項目を公開!
まとめ記事はこちらをチェック!

目次